10月28日、Hi-STANDARDが日本ガイシホールにて「THE GIFT TOUR 2017」の2日目となる名古屋公演を開催した。生憎の雨模様の中、思い思いのTシャツを着たオールジェネレーションズ達で溢れるガイシホール。久し振りのライブに肩を回すアダルトジェネレーションからまだ声変わりしていないようなキッズジェネレーションまで幅広い世代が集う光景に18年という時が経ったことを実感させられる。その「時」の中でいつしか伝説のバンドとなった彼らが現在進行形のバンドであることを実証した素晴らしいライブだった。
名古屋公演のゲストアクトとして登場したのはフォーリミこと04 Limited Sazabys。「AIR JAM」に憧れ、彼らの地元である名古屋にてバンド主体のフェス「YON FES」を毎年開催するなどハイスタへのリスペクトを公言してきたフォーリミ。昨年の「GOOD JOB! RYAN TOUR 2016」新潟LOTSでの対バン以来となるハイスタのツアー出演となったこの日のフォーリミは自分達がハイスタのツアーに参加する意味、このステージに立つ意味を叩きつけるようなライブを観せてくれた。「monolith」「knife」「escape」と怒涛の先行攻撃が炸裂すると「ホントにホントにホントにホントにハイスタだよ!」とステージの上のGENも興奮を隠しきれない様子。だがその表情からは「ハイスタを食ってやる」という気迫も感じる。「マジで人生面白いです。このステージに立ちたいバンドは全国腐るほどいると思うけど俺達は自分達で掴み取ってここに立っています」と語る彼らの頼もしさに胸が熱くなる。さらに「アイドルバンドだと思っている人達を解らせにきました。俺達はパンクバンドです。」と宣言しての「Buster call」「Squall」でバンドのアティテュードを叩き付け会場を魅了した4人。名古屋のバンドが地元名古屋でハイスタと真っ向から勝負したライブだった。
そしていよいよHi-STANDARDの登場。この日のライブはまさかの「Turning Back」から「Standing Still」という『Making The Road』の流れでスタート。1999年のあの衝撃が2017年に目の前で繰り広げられているという事実に興奮する。畳み掛けるように披露された「The Gift」で強く感じたのは『Making The Road』と『The Gift』の間にあった18年という壁がこのツアーでなくなったこと。これはこの後続くライブで過去の曲を演奏しても新曲を演奏しても感じた面白い感覚であった。「来いよ名古屋!ビビッてんじゃねえぞオイ!」と横山が煽れば「オッサンもオバサンもガキンチョもガンガン来いよ!」と難波も被せて挑発し「All Generations」を会場の全世代にぶつける。続く「Dear My Friends」を聴きながらふと周りを見渡すと会場に集まったみんなが拳を上げながら大合唱していたのだが、この光景の美しさといったらなかった。ハイスタという共通言語が繋いだ大きな友達の輪をガイシホールに見ることが出来た瞬間でだった。またライブではアリーナ公演ならではの見せ場として横山のギターソロからの「Pacific Sun」や恒岡のドラムソロからの「Pink Panther」といった新旧インストナンバーも披露。ハイスタのインストナンバーは曲の随所に遊び心を感じることが出来るのでライブで聴くとその楽しさが倍増することを実感する。また「Close To Me」や「Growing up」や「Fighting Fists, Angry Soul」のような活動休止前の曲を演奏し「今やると全然違って聴こえて面白い」と難波が語っていたようにそれらの曲を現在のハイスタが演奏することで曲達に新たな息吹がもたらされる印象を受けたのは18年振りのツアーだからこそ発見出来た面白さ。会場のファミリー席を指差しお父さんお母さんとハイスタのライブを観に来ていたチビッコ達から「ハイスター!」という可愛らしいコールを受けたあとに披露された「Hello My Junior」は息子に向けられた愛でいっぱいの曲…かと思いきや「中3の息子にもグッときたって言われたけどさ、あれチ○コの歌なんだよね」と暴露するシーンも。この感じ、めちゃくちゃハイスタだ。そのMCの後に聴く「Hello My Junior」で「Get up and stand up」とか歌われても…めちゃくちゃハイスタである。「もうひとつのスタートライン、始まってます!」と歌われた「Another Starting Line」では現在のハイスタを現在進行形のバンドとして見せられることへのメンバーの喜びが溢れており、それは楽しそうに演奏するライブからも多々感じることが出来た。「ハイスタが一番アホです!もっとアホになってもいいんじゃないの!」とアホ賛歌である「Teenagers Are All Assholes」でも楽しくて仕方ない気持ちが溢れまくっていた。横山がリードを歌った「The Sound Of Secret Minds」も素晴らしかった。この18年間、横山が自身の活動で培ってきたことがハイスタに見事にフィードバックされておりそれを難波と恒岡が受け止める。これも現在のハイスタの強さだろう。そして難波も横山もそれぞれがハイスタ休止中に演奏してきたあの曲が演奏された。そう「Stay Gold」だ。もはや日本の音楽史に残るマスターピースとなったこの曲、やはり爆発力がとてつもなかった。常にピーク状態であったフロアの温度が更に上昇しモッシュとダイブで応戦するキッズ達。とにかくみんながみんな嬉しそうだ。その姿を見てメンバーも喜びの表情を浮かべる。ツアーに先駆け公開された横山のコラムの内容に難波が触れ「ハイスタ畳まないぜ、畳みません!」と言い切り「Free」「Maximum Overdrive」で本編が終了。アンコールではこの日誕生日を迎えた04 Limited SazabysのGENをステージに呼び込みお約束の顔面誕生日ケーキで祝福。まさかのサプライズにGENも幸せそうな笑みを浮かべる。この空気感は再始動直後のハイスタにはなかった。活動再開から6年が経ち、ハイスタでいることが特別だった復活直後とはバンドのモードが変わりハイスタでいることが当たり前となったことが伺える一幕でもあったと思う。「Friend Song」「Starry Night」「I Know You Love Me」と1曲1曲噛み締めるように演奏し最後は「Can’t Help Falling In Love」で大円団を迎えた。2011年の活動再開から2016年のシングル発売を経てアルバムリリースとツアーというハイスタが現在進行形のバンドとして動き出したことを改めて実感させられた2時間弱。このツアーでハイスタは2000年までのハイスタと2011年以降のハイスタを完全にひとつにしようとしているのかもしれない。いや、ツアー2本目である名古屋公演で既に彼らはその領域に達していた気がする。それが新しいハイスタ、新しい時代のハイスタなんだと思う。「全ての世代を越えたガキども」がユナイト出来る場所としてハイスタがいてくれる。終演後、ガイシホールは自分だけに贈られたギフトを抱えたオールジェネレーションズ達の金ピカの顔で輝いていた。ツアーは続く。そしてハイスタもその先へ。
Text by 柴山順次(2You Magazine)
Photo (Hi-STANDARD) by 古川 喜隆 / JON...
Photo (04 Limited Sazabyz) by ヤオタケシ